ヘブライ四・一五~一六
クリスマスは、天におられた神の御子が、マリアに宿り、この世に生誕されたことです。私たちの救い主=キリストとして天から地へと降りてこられたので「ご降誕」と表現することもあります。
クリスマスおめでとうございます。今宵、皆様、ようこそ、キリスト教会にお越し下さいました。
今から二千年ほど前、クリスマスの晩、羊飼いたちが神の御子、救い主のご降誕の所へと、その恵みの場所へと喜び勇んで出掛けて行きました。「さあ、ベツレヘムへ行こう。主が知らせて下さったその出来事を見ようではないか」。そう天使が知らせてくれたのです。「私は、民全体に与えられる大きな喜びを告げる。今日、ダビデの町で、あなた方のために救い主がお生まれになった。この方こそ、主メシア(=救い主、キリスト)である。あなた方は、布にくるまって飼い葉桶に寝ている乳飲み子を見つけるだろう。これがあなた方へのしるしである」。このように知らせてもらったので、羊飼いたちは、ベツレヘムにいる布にくるまって飼い葉桶に寝ているという乳飲み子を探しに行きました。そしてやっとの思いで探し当てました。布にくるまれただけの飼い葉桶に寝ている乳飲み子なんて普通いないからです。探し当てて目にした光景は天使の言った通りでした。羊飼いたちはこの方こそ、救い主なのだ。神は我らと共におられると。それをヨセフとマリアに知らせました。何事かとここに集ってきた人々にも知らせました。羊飼いたちは慰めと勇気を得ました。それで自分たちも神と共に生きていこう、と思いを確かにして「神に栄光、地には平和」と神様をあがめ賛美しながら、その後の人生を歩み始めました。
マリアは、乳飲み子を持ってきた布にくるみ、そこにあった飼い葉桶に寝かせました。宿屋には彼らの場所がなかったからです。それで、生まれた場所は家畜小屋であったと伝えられています。ヨセフとマリアにしてみれば、御子がお生まれになるのに「こんなはずではなかった」という気持ちであったことでしょう。赤ちゃんだって大変です。寒いのに布にくるまれただけで、動物の匂いのする飼い葉桶に寝かされるなんて。でも、正にここに、神の御子がお生まれになりました。
もし、神の御子がお生まれになるのだからと、ヨセフとマリアが王様のお城に迎え入れられて、赤ちゃんがいかにも神々しく、王宮の暖かなお布団、豪華なベッドに寝かされたとしたら、羊飼いたちは、天使からそのように知らされても「さあ、行こうではないか」という気持ちにはならなかったでしょう。俺らの行ける所じゃない、と御子のご降誕は、彼らの近づけない出来事になったに違いありません。でも、そうはなりませんでした。羊飼いたちだって、そこに出掛けていく、近づいていくことが出来ました。
「今日、ダビデの町で、あなた方のために救い主がおうまれになった」。羊飼いたちでさえも気が付きませんでした。告げ知らせてもらうまで。
でも…、気が付かなくても、貧しいヨセフとマリアの所に御子は来て下さいました。羊飼いたちも気が付かなくても知らせてもらいました。
ならば、私たちの所にも御子はおいでになっています。そして今宵、私たちにも、御子があなたの所にもおいでですよ、と知らせてくれました。天からわざわざ降りて来られたのは、私たち一人ひとりの事を、他人事のようには思えなかったからです。深い憐れみを以て私たちと共にいることとなさり、そのことを喜びとなさったからです。
皆様、今年はどのような一年であったでしょうか。感染症のもとで、思いがけない困難試練に遭遇してした方も。大切な方を天に送られた方も。あるいは、敢えて人様に言う程ではないけれど、大変だった。いや今も実は大変なんだ、という方もおられることでしょう。
先程お読みしました新約聖書のヘブライ書は、御子のことをこう語ってくれました。この大祭司(=御子イエス・キリスト)は、私たちの弱さに同情できない方ではなく、罪は犯されなかったが、あらゆる点において、私たちと同様に試練に遭われたのです。また他の箇所でもこう語ります。事実、ご自身、試練を受けて苦しまれたからこそ、試練を受けている人たちを助けることがお出来になるのです。誰に対してもです。この神の御子イエス・キリストが、私たちの所に気が付かない内に、おいでになっておられます。そして気付かせてもらった者には、慰めと勇気になります。
祈り
去年も今年も、世界中が思いがけない状況になりました。おいで下さった御子イエス・キリストに気付かせて下さい。主イエスよ、あなたは私たち一人ひとりを他人事には為さいません。むしろ私たちは、自分のこと以外はどうしても他人事になってしまうことをお赦し下さい。この社会の隅々にも、あなたがおいでになっておられることを信じます。ご降誕に気付かせて戴いた私たちは、人々と分かち合い、あなたの恵みの御座に共に近づくことが出来ますように。困難や不安の中にありましても、どなたもご降誕の祝福に支えられつつ歩めますように。また私たちみんなの健康が心身ともに守られますように祈ります。